見知らぬ明日(46) | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
寺田寅彦はその初期にX線に関する研究を行い、学士院恩賜賞を受賞した物理学者です。震災に関する研究も多く、その言葉で一番知られているのが「天災は忘れた頃にやってくる」という警句です。言葉を裏返すと「災害は繰り返しやってくる」ということです。 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
地震の予測は難しい | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
地震の予測は難しく、まして地震の予知はまだ出来ません。地震の予知は、@いつ起こるか、Aどこで起こるか、B規模(M:マグニチュード)はどの程度かという3つの要素があり、そのうち一つでも欠ければ意味がありません。 『地震予知の研究は防災を翻弄してきた。学者の有志が「地震予知−現状とその推進計画」をまとめ、1965年に国の地震予知研究計画が始まった。「明日起きても不思議ではない」とされた東海地震説を機に、76年に地震予知推進本部が設置された。78年には大規模地震対策特別措置法ができ、東海地震の予知を前提とした防災対策がつくられた。気象庁の「判定会」の予知にもとづき首相が警戒宣言を出す体制ができ、非現実的な訓練も繰り返されてきた。 95年に阪神・淡路大震災が発生。「関西で大地震があるとは知らされていなかった」と批判された。予知への風当たりも強まり、・・・2011年の東日本大震災はマグニチュード(M)9の巨大地震だった。長期予測にはない規模で研究の問題が浮かび上がった。日本地震学会は、地震学で何ができ、何ができないかの「等身大」の姿を伝える行動計画をまとめた。:朝日新聞 2024/03/25』 地震の種類の一つに陸のプレートと海洋のプレート付近で発生する「海溝型地震」があり、それにはプレート間地震と、プレート内地震のスラブ内地震があります。もう一つに陸域や沿岸部の浅い場所(深さ約20km以浅)で発生する「断層型地震」があり、この他に火山の活動に伴ってその周辺などで発生する「火山性地震」があります。 普通の海溝型地震は百年単位で繰り返され、断層型地震の活断層で起きる地震は数千年単位とされていますが、その活断層は日本に分かっているだけでも約2000箇所もあります。 北海道地方ではその太平洋側沖合の千島海溝や日本海溝から陸側下へ沈み込む境界付近で、東北地方でも太平洋プレートの沈み込む境界付近で、関東地方では太平洋プレートの他に相模湾から房総半島沖合にかけての相模トラフから陸地の方へ沈み込むフィリピン海プレート境界付近で、中部地方では駿河トラフや南海トラフから陸側に傾き下がるプレート境界付近で、近畿地方では太平洋沖合の南海トラフから陸地の方へ沈み込むフィリピン海プレートと陸のプレートとの境界付近で、中国・四国地方でも南海トラフから陸地へ沈み込むプレート境界付近で、九州・沖縄地方では太平洋沖合の南海トラフや南西諸島海溝(琉球海溝)から陸地へ沈み込むプレート境界付近で地震が発生します。 そして、上の陸地の方へ沈み込むプレートの境界付近の他に、陸域のやや深い場所のプレート付近でも地震が発生することから、それぞれの地震の発生する所のひずみの蓄積や構造等が異なるので、何がどうなったら地震が発生するのかを定性的に言えたとしても、決定的には時間も含め場所や大きさなど示すことは不可能なのです。 |
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地震はどのくらい起きているか | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
世界と日本の地震規模ごとの回数
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日本列島周辺のプレート | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
地震防災研究推進本部の素材集「日本列島周辺のプレート」の名称部分を追記等の上作成 東日本では太平洋プレートの境界沿いにはM5やM6の地震が頻々と発生して有感になります。さらに数十年〜百年に一度程度M7〜8の地震が発生し、千年に一度程度それらを数個まとめた領域で東北地方太平洋沖地震のようなM9の地震が発生します 西南日本のフィリピン海プレートの境界沿いには通常はM5以上の地震発生は殆ど見られず、昭和の東南海地震と南海地震の後数年間余震として中程度の地震が発生する他は、微小地震が散発的にしか発生していないが、南海トラフでの宝永地震のような最大規模な地震も発生しています。 |
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日本の主要活断層帯 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
地震防災研究推進本部「主要活断層の評価結果図」の名称部分を追記等の上作成 |
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1923年の関東地震予測と大森・今村論争 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
写真(左)(右):大森房吉・今村明恒(共に東京帝国大) 関東大震災(1923年:大正12)の18年前(1905年)に、地震学教室助教授だった今村明恒は、雑誌「太陽」9月号に論文「市街地における地震の生命及び財産に対する損害を軽減する簡法」を発表。その1か月後に著書「地震学」を著し『斯東京に於いて数百ないし数千の死者を出したる特別の大震は、慶安2年、元禄16年及び安政2年に起こりたるものの3回にて、103年となる今、安政2年を去ること今明治38年には正に50年なるを以って、今後50年の間には再び斯の如き破壊力が暴を逞しくする時期に到着するものと覚悟せざるべからず』と震災予防に警鐘を鳴らした。今村は東京における地震の際に引き起こされる火災による災害についてもとりあげ、被害想定をおこなっている。 この記事は、その時は大きな話題とならなかったが、年が明けた1906年1月16日の「東京二六新聞」が、丙午年の都市の迷信にあわせてセンセーショナルに記事を掲載した。騒動は大きくならないように思えたが2月に東京湾に大きな地震が発生し、東京湾近郊での被害もあり人々が大きな不安におちいった。そこに流言等も飛び交い大きな騒動になったと言われている。 あまりに社会的に大きな騒動となってしまったため、上司である地震学教室の主任教授だった大森房吉は、その年の雑誌「太陽」の3月号で『本年は丙午の年ならば、火事多かるべきとの俗説ありしところに、今後約50年の内に、東京に大地震起りて、20万人の死傷者を生ずべしとの浮説、一たび現れしより、頗る人心を動揺せしめ、東京が今にも丸潰れになる程の災害を蒙るべきことは、学理に争う可からざる事実なり、などとの噂広まり、世人の迷惑せること少なからざるが、元来不完全なる統計に依れる調査を基として、間違無く将来の出来事の事実を予知し得べきにも非ず。東京激震の如きも、結局地震の起これる平均年数より生ぜるものなれば、学理上の価値は無きものと知るべきなり。』と、今村の説を根拠の薄い”浮説”であると説き,厳しい言葉で今村の説を否定し騒動を沈めた。 そして1923年に関東地震が発生するのである。この関東地震発生の前に大森房吉は、近々発生する関東地震を予見することなく、オーストラリアのメルボルンで開催された汎太平洋学術会議に出席した。会議後訪問したシドニーのリバービュー天文台で、目の前に置かれた地震計の針が大きく動くのを見て、それが東京近郊で発生した関東地震であることを知って愕然とする。帰りの船の中で、その時罹患した脳腫瘍が悪化し、病に伏せってしまう。その病に加え責任の大きさに苦しむ大森博士を横浜港まで足を運び出迎えたのが今村明恒であった。 さまざまな要因が重なって発生した騒動であるが、その原因の一つに情報の伝え方がある。その情報の発信の仕方ひとつでセンセーショナルな騒動に変わってしまう。災害の多い日本では情報の発信ということに十分注意を払いながら伝えることの重要性を教えてくれているように思われる。 (東京大学大学院情報学環総合防災情報研究センター:研究レポート大森VS今村論争を一部使用して作成) |
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世界の大きな地震 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
世界で発生(1900年以降)した地震規模の大きな地震
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日本とその周辺の主な地震 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
地震記号例(記号位置:概ねの震央:気象庁震度データベース(1919年以降)) ◎:海溝型 M8.0以上、○:海溝型 M7.0以上、△:断層型 ×:1919年以前の地震(震央不明:想定) 参考:令和6年理科年表(国立天文台)机上版:日本付近のおもな被害地震年代表 :「世界の被害地震の表」https://iisee.kenken.go.jp/utsu/index.html |