「自動運転」に係る問題(4)完全自動運転実用化の先は長い


レーダーで自転車や交差点の事故を防ぐ

 ドイツ大手部品メーカーのContinental(コンチネンタル)は、開発中の衝突回避技術や低速域の追従技術などを公開、20182020年ごろの実用化を目指す()。
 

  表 Continentalが公開した開発中の技術

 欧州の自動車アセスメントである「EuroNCAP」は、2018年に自転車、2020年には交差点で真横から向ってくる車両に対して、衝突回避する機能の評価を盛り込む計画。同社は、EuroNCAPが新しい基準を導入する時期に合わせて、これらの技術を実用化する方針。

 Continentalが公開した自転車との衝突回避システムは、速度30kmhで走行中に、前方右側の停止車両の陰から5kmhで飛び出してきた自転車をミリ波レーダーで検知、自動ブレーキを作動させる(1)。ESC(横滑り防止装置)による自動ブレーキの減速度は0.8Gで、最大1Gまで可能。

  
  
1 赤い車両の陰から飛び出した自転車をミリ波レーダーで検知する。電波の
    回り込みの性質を活用し、車両の陰にいる自転車でも見つけることができる

 一方の交差点での衝突回避技術は、真横から走行してくる車両を検知して、自動ブレーキを作動させる。実験では、フロントバンパー左右に24GHzレーダーを装着して30kmhで走行。真横から20kmhで走行してくる車両を検知する(2)。自動ブレーキを作動させるタイミングは、衝突までの時間であるTTCTime To Collision)が0.5秒。

  
  2 24GHzレーダーの検知角の広さを生かして、真横から接近してくる車両(左側)を
    検知して自動ブレーキを作動させる

 一般的なミリ波レーダーは検知距離が200m程度と長いが、検知できる角度は90度前後に限られる。このため、左右から走ってくる車両を検知することは難しい。一方、24GHz帯のレーダーは、検知できる角度が150度と広い。検知距離は60mと短いものの、幅広い領域の障害物を検知できるので左右に2個取り付けるだけで済んでいる。

○ 高級車の機能を単眼カメラで低コスト化

 同社は、高速道路での同一車線における低速域(060kmh)の追従システム「トラフィック・ジャム・アシスト」として、単眼カメラとミリ波レーダーを使う方式を提案した(3)。低速域の追従機能は、欧米の自動車メーカーを中心に採用が進んでおり、国内メーカーも追従する動きがある。

  
  3 低速追従システム。(a)車内。(b)追従走行の様子。カメラやミリ波レーダーで
    前方の車線や先行車を検知して走行する

 開発したトラフィック・ジャム・アシストは、次の三つの機能を提供する。(1)先行車がいなくても車線を検知して道路中央を走行。(2)車線と先行車の両方を検知して道路中央で追従走行する。先行車が車線変更しても、同一車線を走行する。(3)車線が見えなくても先行車を検知して追従走行する。 

 車線が見えない場所でも追従走行する機能は、ドイツDaimler(ダイムラー)が新型「Eクラス」などで供給している。Eクラスはステレオカメラを使うが、Continentalは単眼カメラで実現し、低コスト化を図る計画。

○ LED点灯でわき見運転警告

 同社は、スマートフォン(スマホ)を使った自動駐車システムも披露した(4)。スマホと車両はBluetoothで通信する。画面上で、駐車位置を選択し、駐車の実行ボタンを押す。運転者が降車してから駐車できるため、狭い駐車場でも停めやすい。

  
  4 スマホで操作できるようにした自動駐車システム。
    スマホ(赤線)のボタン操作で車両に指示を与える


 車両の前後左右に4個のカメラ、前後に6カ所ずつ合計12個の超音波センサーを搭載する。白線を検知するカメラと、障害物を検知する超音波センサーの情報を統合して、駐車位置を見つける。駐車位置から車両を出す機能は、今後取り組む。

 自動運転時代に向けたHMI(ヒューマン・マシン・インターフェース)として、運転者の顔向きを検知して、走行状態に応じて警告するインストルメントパネルの開発品も見せた(5)。高速道路の分岐点が接近して、自動運転モードから手動運転モードの切り替えが迫っている場合に、インパネを取り囲むように配置したLEDを点灯させるなどして、わき見運転を警告することなどを想定。

 

 図5 自動運転車に組み合わせる顔向き検知シス    図6 タイヤ情報システム。従来のように空気を
  テム。走行状態によって、車両前方を向いて      入れるバルブにセンサーを組み付けるのでは
  いないときは注意を促す
             なく、タイヤの内側の表面に組み付ける
                        (中央の突起部がセンサー)

 従来のタイヤ空気圧監視システム(TPMS)を進化させたシステムも公開した(6)。タイヤごとの荷重とトレッド溝の深さも測定できる。センサーはタイヤ内部に搭載。センサーが地面に当たってから離れるまでの時間を検知し、その時間からタイヤの接地面積を計算する。接地面積と空気圧で四つのタイヤそれぞれにかかる荷重を推定できるという。溝の推定はGPS(全地球測位システム)と連動させてタイヤ周長の変化を捉えて算出する。
                              (語句削除加筆)

日経Automotive201611月号の記事を再構成 日経Automotive 小川計介

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