タントとワゴンRとスペーシアとNBOXの自動ブレーキ

 軽自動車に普通車にも負けない自動ブレーキ


 平成29年3月14日に(独)自動車事故対策機構〔NASVA〕からダイハツタントの自動ブレーキ等の追加試験結果(当HP自動ブレーキのページ)が公表され、同様に、3月9日にはスズキのワゴンRが公表されています。

 分かりやすくするために、はみ出し警報、後方視界情報を除いた結果は次のとおりです。軽自動車では、今年、NBOXがモデルチェンジされ、旧モデルの自動ブレーキも刷新されるのが自然である今、ホンダで最新の自動ブレーキ(フリード H28/9モデルチェンジ)HondaSENSING相当のものが載せられると考えられたので、同試験結果を掲載しています。

タント


ワゴンR


スペーシア


NBOX               フリード

○ タントのスマートアシストⅢ

 従来の運転支援システム「スマートアシストII」は、単眼カメラとレーザーレーダーで車両との衝突を回避していた。これに対して新システムではステレオカメラだけで、車両に加えて歩行者との衝突を回避できるようにした。

 新システムのステレオカメラはデンソー製で、左右のレンズの間隔が80mmである。同カメラを搭載する他社のシステムでは、富士重工業の「アイサイト」が350mm、スズキの「デュアルカメラブレーキサポート」が160mmとなっている。
 被害軽減ブレーキの合計得点は、42.2/57.0。

○ ワゴンRのデュアルセンサーブレーキ

 フロントガラスに設置した2つのセンサーで、前方の歩行者やクルマを検知。近距離や夜間の検知に優れたレーザーレーダーと、歩行者も認識する単眼カメラを組み合わせたコンパクトなシステム被害軽減ブレーキの合計得点は、44.9/57.0。
 スズキは、ステレオカメラを推してきたがコストや小型化を優先して方針を転換した。

○ スペーシアのデュアルカメラブレーキ

 スバルの「アイサイト」と同様のカメラを二つ使ったシステムで、装置は、カメラ間隔は異なるが同じ日立製を使っていて、「アイサイト2」に近い性能を持っている。
 軽自動車の中では、被害軽減ブレーキの合計得点は、
52.7/57.0で一番良い。

○ フリードのHondaSENSING

 ホンダセンシングはミリ波レーダーと単眼カメラからなるシステムで、このミリ波レーダーは、対象物体の位置や速度だけでなく、性能を向上させることで、検知が難しいとされてきた電波の反射率が低い歩行者まで検知し、単眼カメラは、車両前方約60mまでの対象物体の大きさや形状を識別するとされ、トヨタのプリウスなどと同じシステム構成ですが、対歩行者については、まだ、ソフトウェアの完成度が低いのか、期待した性能は出ていない。被害軽減ブレーキの合計得点は、44.4/57.0と軽自動車と同程度。

 単眼カメラ+レーザーレーダーか、次は夜間の歩行者検知が課題

○ 「ワゴンR」にステレオカメラを採用しなかったワケ

スズキの新型軽自動車「ワゴンR」は、自動ブレーキ用センサーとして単眼カメラと赤外線レーザーを一体化したセンサーユニットを採用した(図12)。
 

        図1        図2単眼カメラと赤外線レーザーを組み合わせたセンサーユニット

20155月に部分改良して発売した軽自動車「スペーシア」を手始めに、スズキは小型車「ソリオ」や軽自動車「ハスラー」などに、自動ブレーキ用センサーとしてステレオカメラを搭載してきた
 ステレオカメラは歩行者や車両を高い精度で認識できる特徴がある一方で、部品コストの面では不利になる。自動ブレーキのシステム価格は、スペーシアで75600円。同社の担当者は「赤字覚悟の戦略的な価格設定」と表現したが、それまで採用していた赤外線レーダーを用いたシステムに比べて3倍以上の引き上げとなっていた。
 センサーの変更によって歩行者検知機能を追加できたものの、車両価格が100?200万円程度の軽自動車では割高に感じる消費者もいた。ステレオカメラで先行する富士重工業の「アイサイト」に比べるとカメラ間距離を短くして小型化したが、それでも「車内では存在感があった」(スズキの技術者)こともセンサーの変更の一因となった(図3)。


3 ステレオカメラを採用したスズキ[スペーシア」       図4 ワゴンRの室内 ルームミラー前のセンサーユニット

こうした経験を踏まえて、新型ワゴンRでは単眼カメラと赤外線レーザーを一体化したユニットを採用した。同センサーはドイツContinental社製で、トヨタ自動車が小型車向けの自動ブレーキシステム「Toyota Safety Sense C」で採用しているハードウエアと同じ品種だ

 トヨタによる大量調達でコスト面でも鍛えられたセンサーと言える。三菱自動車が20172月に部分改良して発売した「アウトランダーPHEV」もこのセンサーを採用している
これに対して、先述のステレオカメラは日立オートモティブシステムズ製で、同社とスズキが共同開発した専用品だ。

 ワゴンRの自動ブレーキシステムのオプション価格は59400円。一見するとコストが下がっていないように思えるが、これは軽自動車に初搭載したヘッド・アップ・ディスプレー(HUD)を含む価格だ。小型化の面でも、ルームミラーの前面にコンパクトに収めた様子を実車で確認できた(図4)。

 スズキは単眼カメラと赤外線レーザーを一体化したContinental社製のセンサーを、20171月に発売した小型車「スイフト」で初めて採用していた。今回、ワゴンRに横展開したことになる。

 ステレオカメラから、単眼カメラと赤外線レーザーの組み合わせに変更したスズキ。次の変更のポイントとなりそうなのは、夜間に歩行者を検知できるかどうかである。2018年に日本や欧州の自動車アセスメント「NCAP」で、夜間の歩行者を対象とした自動ブレーキ試験が追加される見込み。スズキの担当技術者によると、「その先のNCAPへの対応も含めてセンサーを比較検討中」という。

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